染物は型堀師が紋の型を彫り、それを元に染の職人が染め抜いて仕上げていきますが 、非常に細かな図案の場合、染だけで表現するには限界がある場合があります。
例えばこちらの家紋「檜扇に雁金」扇の要の部分や、一番下の海老の尻尾のような部分、垂れた房の重なりの表現などの細かな描写の部分です。
大きな風呂敷の場合は風呂敷の大きさに合わせて家紋の大きさも大きくなるため染だけでも表現できる可能性がありますが、
写真のような57cm巾の袷ふくさへの家紋入れの場合、家紋の直径は7cm~8cm、この場合は染だけでは表現しきれず、上絵での処理が必要となります。
檜扇・雁金のアウトラインは染、残りの細かな部分を上絵師が描写することとなります。
上絵が必要なケース(2)
こちらの「七宝に揚羽蝶」などもやはり上絵が必要になります。
七宝の真ん中に小さな揚羽蝶を描写しますが、七宝の大きな曲線があるため、真ん中のスペースが極めて狭くなっています。
揚羽蝶の直径はおよそ3.6cm程、これを染めだけで仕上げるのは難しく、揚羽蝶の羽の線。目などはかなり繊細な表現となりますので、やはり染と上絵両方を使っての仕上げです。
どの程度まで染で、またどの部分を上絵で描写するかにつきましては職人同士の話し合いで進めますが
仕事をさせて頂くのは、私が全幅の信頼を寄せている熟練の職人たち、それゆえ職人の腕を信じてお任せしていますが、毎回さすが!と思える仕上がりで上げてきてくれます。
型代・上絵代が別途発生します。
生地の違いによる難易度もあります。
白山紬の場合は凹凸があまりありませんので割と表現がしやすいのですが、細かなうねりのある縮緬(ちりめん)の場合は、結構難易度が上がります。伝統工芸士の腕の見せ所です。
たださすがに熟練の職人でも、白山紬なら可能だが縮緬の場合は無理という事もありますので、家紋をお聞きした時点で職人と相談をして、その上でどんな感じでできるかをご案内させて頂きます。
白山紬の袷ふくさ・縮緬の手ふくさについては以下のページで詳しく説明しています。もちろん購入も可能です。
同じ家紋を入れる場合でも、切手盆の場合は染物よりも繊細な描写が可能です。
何人もの伝統工芸士の手を経て作り上げられる家紋入りの風呂敷やふくさ達・・一生物の逸品です。
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